【取適法を分かりやすく解説】下請法・取適法とは?改正ポイントも踏まえて解説

本記事では、この重要な下請法・取適法が「そもそも何なのか」という基本に立ち返り、わかりやすく解説します。

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下請法から取適法への改正点だけに絞ったおすすめの資料になります。

今回の記事はこんな方にオススメの記事です!

・コンプライアンス体制を強化したい委託事業者(旧:親事業者)の担当者様
・自己の権利と利益をしっかり守りたい中小受託事業者(旧:下請事業者)の経営者様や担当者様。
・法改正に向けて、自社の取引規定や契約書を見直す必要のある法務・コンプライアンス部門の担当者様

中小企業診断士 製造業デジタルマーケティング専門家の清水誠太

監修者
中小企業診断士 清水誠太
岐阜県出身。株式会社シミセーの代表取締役。Setchan製造業ブログの運営者。元大手メーカーの調達バイヤー、調達戦略のITシステムの技術営業として6年間勤務。その後、独立して製造業に特化したデジタルマーケティングの専門家として中小企業様を伴走支援。YouTubeチャンネルも公開中!

こちらの内容は2025年12月時点の情報になります。情報は適宜更新を行いますが、最新情報は公正取引委員会の公式ホームページ等をご覧ください。2026年1月から下請法から取適法に変わります。

目次

はじめに:中小企業を守る「下請法・取適法」の基本と目的

「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)は、日本の産業構造を支える重要な法律の一つです。この法律は、大企業(親事業者)が中小企業(下請事業者)に業務を委託する取引において、優越的な地位を利用した不公正な取引が行われることを防ぐために制定されました。

主な目的は、代金の支払いの遅延などを防止し、公正な取引を確保すること、そして、中小受託事業者の利益を保護し、国民経済の健全な発展に寄与することです。

2025年5月23日に公布された法改正により、この法律は「中小受託取引適正化法」(略称:取適法)へと名称が変わり、その適用範囲も拡大されます。改正の多くは令和8年(2026年)1月1日から施行・適用されます。

取適法の施行スケジュール

本記事では、この法律の「基本のキ」を、具体的な取引の例を交えて解説します。

下請法・取適法の対象となる「中小受託取引」とは?

この法律が適用される取引(中小受託取引)は、委託する内容と、取引を行う両者の資本金や従業員数によって定義されます。

対象となる「取引の内容」(5種類)

取適法の対象となる取引は、次の5種類に大別されます。

取引の種類具体的な内容
製造委託物品を販売したり、製造したりする事業者が、その物品の製造(または部品の加工)を他の事業者に委託すること。例えば、自動車メーカーが部品の製造を部品メーカーに委託するケースなどです。また、金型、木型、治具などの専ら物品の製造に用いられる物品の製造委託も含まれます。
修理委託物品の修理を請け負う事業者が、その修理の全部または一部を他の事業者に委託すること。
情報成果物作成委託プログラム、映画、デザインなど情報成果物の提供や作成を行う事業者が、その作成の全部または一部を他の事業者に委託すること。
役務提供委託他者から請け負った役務(サービス)の提供を、他の事業者に再委託すること。ただし、建設業法上の建設工事に係る役務提供は対象外です。
特定運送委託(2026年改正で追加)物品の販売や製造などの目的で、引き渡しに必要な運送を他の事業者に委託すること 。

対象となる「事業者間の基準」(資本金と従業員)

取引が「中小受託取引」として取適法の規制対象となるかどうかは、「委託事業者(親事業者)」と「中小受託事業者(下請事業者)」の資本金、または常時使用する従業員数によって決まります。

例えば、製造委託の場合、委託事業者の資本金が3億円を超えていても、中小受託事業者の資本金が3億円以下であれば適用対象となります(資本金基準)。

また、2026年1月1日以降の改正点として、従来の資本金基準に加えて、従業員数(常時使用する従業員)による基準が追加されました。この基準により、規制及び保護の対象が拡充されます

従業員数(常時使用する従業員)による基準の追加

委託事業者(親事業者)に課される4つの義務

中小受託取引の公正化と中小受託事業者の利益保護のため、「委託事業者」には特に重要な4つの義務が課せられています。

発注内容を明示する義務

1つ目の義務は発注内容を明示する義務です。

口頭発注によるトラブルを防ぐため、委託事業者は発注に際して、給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などの事項を、書面または電磁的方法(電子メールなど)により、遅滞なく中小受託事業者に明らかにする必要があります。

電磁的方法で明示した場合でも、中小受託事業者から書面を求められたときは、遅滞なく書面を交付する必要があります。

引用元:中小受託取引適正化法ガイドブック(公正取引委員会)
https://www.jftc.go.jp/file/toriteki002.pdf

取引に関する書類を作成・保存する義務

2つ目の義務は取引に関する書類を作成・保存する義務です。

取引が完了した場合、委託事業者は、給付、製造委託等代金の額など、取引に関する記録を書面または電磁的記録として2年間保存する義務があります。

支払期日を定める義務

3つ目の義務は支払期日を定める義務です。

委託事業者は、物品などを受領した日(役務提供委託では役務の提供を受けた日)から起算して、60日以内のできる限り短い期間内で、製造委託等代金の支払期日を定めなければなりません。

もし当事者間で支払期日を定めなかった場合や、受領日から60日を超えて支払期日を定めた場合は、受領日から60日を経過した日が支払期日とされます。

支払期日を定める義務

引用元:中小受託取引適正化法ガイドブック(公正取引委員会)
https://www.jftc.go.jp/file/toriteki002.pdf

遅延利息を支払う義務

4つ目の義務は遅延利息を支払う義務です。

委託事業者が支払期日までに代金を支払わなかった場合、受領日から60日を経過した日から実際に支払が行われるまでの期間、中小受託事業者に対して年率14.6%遅延利息を支払う義務があります。

たとえ当事者間でこれより低い約定利率(例えば10%)を定めていても、この法定利率(年14.6%)が優先して適用されます。

遅延利息を支払う義務

引用元:中小受託取引適正化法ガイドブック(公正取引委員会)
https://www.jftc.go.jp/file/toriteki002.pdf

【全11項目】委託事業者に課される主要な「禁止行為」と想定事例

公正取引委員会や中小企業庁(および改正後は事業所管省庁)が取り締まりの対象とする、委託事業者による不公正な取引行為は、下請法(改正後は取適法)第5条に定められており、全部で11項目あります。

これら11項目の禁止行為を以下に示します(カッコ内は取適法における条項を示します)

項番禁止行為の項目概要違反行為想定事例
1受領拒否の禁止
(第5条第1項第1号)
中小受託事業者に責任がないのに、委託した物品などの受領を拒否すること。【納期通り納品の例】家電メーカーが下請業者に部品製造を委託したが、発注量を誤ったため「倉庫が満杯」として、納期通りに納品された製品の受領を拒否した。

【販売不振の例】アパレル企業が委託していた衣料品の販売が低迷したことを理由に、「今期は販売できないから受け取れない」として、完成品の受領を拒否した。
2支払遅延の禁止
(第5条第1項第2号)
物品などを受領した日(役務の提供を受けた日)から60日以内に定めた支払期日までに、製造委託等代金を支払わないこと。【検収遅延の例】機械メーカーが部品の納品を受けた後、「検収が終わっていない」との理由で支払いを3か月先送りにした。

【経理処理都合の例】建材商社がシステム上の都合を理由に、納品後90日を経過してから代金を支払った。
3製造委託等代金の減額の禁止
(第5条第1項第3号)
中小受託事業者に責任がないのに、発注時に定めた製造委託等代金の額を減額すること。【販売価格下落の例】親会社が「販売単価が下がった」との理由で、納品後に下請代金を5%減額した。

【他社比較の例】「他社はもっと安くやっている」として、契約締結後に単価を引き下げた。
4返品の禁止
(第5条第1項第4号)
中小受託事業者に責任がないのに、受領した物品を返品すること。【在庫過多の例】親会社が販売見込みを誤り、発注した数量が余ったため、未使用の完成品を下請業者に返品した。

【季節商品販売不振の例】小売チェーンがシーズン終了後に「売れ残ったから」として、製造を委託した商品を返品した。
5買いたたきの禁止(第5条第1項第5号)通常支払われる対価に比べて、著しく低い製造委託等代金の額を不当に定めること。【コスト上昇無視の例】材料費や電気代が高騰しているのに、親会社が「従来どおりの単価で対応して」と低価格発注を強要した。

【新規取引時の例】新たに取引を始める際、「この価格でやれなければ発注できない」として、原価を下回る単価で契約を締結させた。
6購入・利用強制の禁止
(第5条第1項第6号)
委託事業者が指定する物品や役務を、中小受託事業者に不当に購入させたり、利用させたりすること。【指定業者購入の例】親会社が「この梱包資材はうちの関連会社から購入してほしい」と下請業者に特定業者からの購入を強制した。

【システム利用強制の例】発注管理に使用するソフトウェアを「この有料システムを使わないと発注できない」として、下請業者に利用料を負担させた。
7報復措置の禁止
(第5条第1項第7号)
中小受託事業者が違反事実を公正取引委員会などに知らせたことを理由として、不利益な取り扱いをすること。【通報後の取引停止の例】下請業者が公正取引委員会に支払遅延を通報したところ、親会社がその後一方的に取引を打ち切った。

【発注減少の例】下請業者が行政への相談を行った後、翌月から発注数量を大幅に減らされた。
8有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
(第5条第2項第1号)
委託事業者が有償で支給した原材料等の代金を、中小受託事業者の代金支払い期日より前に差し引いたり、支払わせたりすること。【前倒し相殺の例】親会社が有償で支給した金属材料の代金を、完成品の支払い期日前に代金から差し引いた。

【立替払い強要の例】「材料費は先に支払ってもらう」として、製品納入前に下請業者へ原材料代を請求した。
9不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第5条第2項第2号)金銭、役務、その他の経済上の利益を中小受託事業者に不当に提供させること。【金型保管の例】 自動車メーカーが自社所有の金型を貸与し部品製造を委託しているところ、部品の発注を長期間行わないにもかかわらず、金型等を無償で保管させていた。

【荷役作業の例】 貨物運送を委託している中小受託事業者に対し、当該取引とは関係のない貨物の積み下ろし作業をさせた。
10不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(第5条第2項第3号)中小受託事業者に責任がないのに、発注時取り決めた給付の内容を変更させたり、受領後にやり直しをさせたりし、その費用を中小受託事業者に負担させること。【待機費用の例】 中小受託事業者が指定時刻に到着したにもかかわらず、委託事業者側の準備不足で長時間の待機を余儀なくされた費用を負担しなかった。

【追加作業の例】 完成品を受領したにもかかわらず、プロデューサーの意向により動画を引き上げるための追加作業を行わせ、費用を負担しなかった。
11協議に応じない一方的な代金決定の禁止(第5条第2項第4号)【改正により追加】中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明・情報を提供しなかったりして、一方的に代金の額を決定すること。【運送コスト増加の例】 中小受託事業者(運送会社など)が代金の値上げについて協議を求めたにもかかわらず、これを無視、拒否、又は回答を引き延ばすなどにより、協議に応じなかった。

【値下げの例】 委託事業者が代金の値下げを要請する場合、中小受託事業者が説明を求めたにもかかわらず、具体的な理由の説明や根拠資料の提供をすることなく、代金の額を値下げさせた。

弊社ではYouTubeでも、下請法・取適法の違反事例を紹介しております。ぜひご覧ください。

【2026年施行の取適法の主な変更点】

2026年1月1日から施行される改正では、公正な競争環境をさらに強化するため、主に以下の点が変更されます。

こちらの動画では10分で変更点のみを解説しております!是非ご覧ください。

法律の名称と用語の変更

法律名: 「下請代金支払遅延等防止法」から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:中小受託取引適正化法、または取適法)に変更されます。

用語: 「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」に、「下請代金」は「製造委託等代金」に変更されます。

委託事業者、中小受託事業者、製造委託等代金

適用対象の拡大

従業員基準の追加: 従来の資本金基準に加え、常時使用する従業員数による基準が追加され、規制及び保護の対象が拡充されます。

    ◦ 製造委託、修理委託、特定運送委託では、従業員数300人以下の区分が新設されます。

    ◦ 情報成果物作成委託、役務提供委託では、従業員数100人以下の区分が新設されます。

従業員基準の追加

引用元:中小受託取引適正化法ガイドブック(公正取引委員会)
https://www.jftc.go.jp/file/toriteki002.pdf

対象取引の追加: 新たに「特定運送委託」が適用対象の取引に追加されます。これは、物品の販売、製造、修理、または情報成果物の作成の目的で、引き渡しに必要な運送の委託を指します。

特定運送委託

製造委託の対象物の拡大: 金型、木型、治具などの専ら物品の製造に用いられる物品の製造委託も追加されます。

製造委託の対象物として木型、治具が追加

委託事業者の義務に関する変更点

発注内容の明示方法の変更: 発注内容の明示について、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電子メールなどの電磁的方法による明示が認められるようになります。

遅延利息の対象の拡大: 製造委託等代金の額を減額(減額)した場合でも、減額した額に対して遅延利息(年率14.6%)を支払う義務が追加されます。

禁止行為の追加

協議に応じない一方的な代金決定の禁止が追加されます。中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じないことなどが禁止されます。

手形払等の禁止が追加されます。製造委託等代金の支払い手段として手形払が禁止されます。また、一括決済方式(ファクタリングなど)についても、支払期日までに中小受託事業者が代金に相当する金額の金銭を得ることが困難な場合は禁止されます。

執行体制の強化

事業所管省庁による指導・助言の追加: 公正取引委員会および中小企業庁に加え、事業所管省庁が取適法に基づいて指導及び助言を行えるようになります。

違反情報提供先の追加: 中小受託事業者が違反情報を提供しやすい環境を確保するため、情報提供先に事業所管省庁が追加されます。

勧告規定の整備: 既に違反行為が行われていない場合でも、再発防止措置等を勧告できるようにするなどの規定が整備されます。

最後に:公正な取引の実現へ

今回の法改正は、長らく日本の企業間取引の根幹を支えてきた「下請法」が、現代の経済状況に合わせて進化し、「中小受託取引適正化法」(取適法)としてより多くの事業者を保護する体制へと移行することを意味します。

この法律は、大企業、中小企業といった立場の違いに関わらず、すべての事業者が信頼に基づいて取引を行い、持続可能な発展を遂げるための基盤です。

2026年1月1日の施行・適用まで時間は限られています。新しい従業員基準により、これまで下請法の対象外だった企業が突然委託事業者としての義務を負う可能性もあります。

貴社の発注プロセスや支払い方法は、「取適法」の定める「60日以内の支払期日設定」や「書面交付義務」を完全に満たしているでしょうか? また、取引先からの価格交渉の申し出に対し、「協議に応じない一方的な代金決定」という新たな禁止行為を犯す恐れはないでしょうか?

ぜひこの機会に、自社の取引慣行を改めて見直し、すべての取引先と公平で健全な関係を築けているか、再点検を行ってください。

参考文献

下請法は取適法へ改正

引用元:中小受託取引適正化法ガイドブック(公正取引委員会)
https://www.jftc.go.jp/file/toriteki002.pdf

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