こちらの記事では中小企業が価格転嫁する方法についてご紹介します。
\今回の記事はこんな方にオススメです/
・中小企業の営業担当の方
・中小企業の経営者の方
・大手企業のバイヤー担当の方
私は元々大手メーカーでバイヤーをしており、中小企業の町工場から大手半導体商社まで幅広く担てきました。
また、現在でも様々な企業のバイヤーの方との繋がりから現場の声をよく聞きます。
今回は中小企業が価格転嫁・取引適正化を進める上で必要なことについてご紹介していきます!

中小企業を取り巻く原価高騰の現実
まずは現在の中小企業を取り巻く原価高騰の現実を把握してみましょう。
こちらは中小企業白書から引用したエネルギー・原材料価格の高騰の状況、販売先への価格転嫁状況の資料になります。
徐々に経営を圧迫するほどの影響になりながらも、価格上昇分の50%も価格転嫁できていない状況です。

出典:中小企業庁「2023年版中小企業白書」

出典:中小企業庁「2023年版中小企業白書」
昨今、自動車メーカーで下請け企業への下請法違反がニュースになっております。
いわゆる『買いたたき』に該当する内容です。

製造業ビジネスの構造上、最終消費者への販売価格には、完成品に至る全ての原価が積み上げられていきます。
しかし、需要の価格弾力性が高い製品に関しては完成品メーカーも販売価格を上げることは容易ではありません。
需要の価格弾力性が高いとは、価格変化に対して需要が大きく変動するという意味です。つまり、価格が高くなると売れなくなるということです。
その為、結果として下請けサプライヤーの価格転嫁に対して簡単にYESと言えないのです。
この場合、どこかの企業が価格転嫁を諦める=利益を下げるという行為につながります。
この諦める企業になりやすいのが中小企業です。
では、なぜ中小企業が諦めないといけないのでしょうか。
中小企業は価格転嫁できない
中小企業はなかなか大手バイヤー企業に対して価格転嫁ができていないです。
しかし、私の意見としては一概に『大手メーカーのみが悪い』という事は安直な意見と感じます。
一定程度、下請企業側の責任もあると感じます。
分かりやすい考え方として5フォース分析があります。

買い手の交渉力が高い状況を作ってしまった下請け側の責任もあります。
大手バイヤー企業(買い手)としては、自社への依存度を上げた方が交渉優位になる為、その強い交渉力で下請け企業を囲ってきた経緯もあります。
下請企業もそう簡単に逆らう事は難しいですし、リスク分散に向けて多角化展開を進める事もリソース的に難しかったと思います。
そのような中で、昨今の中小企業の高齢化、人手不足等の中小企業を取り巻く環境変化も重なり、多くの下請企業で『倒産』の二文字が現実的になってきたのです。
では、中小企業は今後どのように価格転嫁をしていくべきでしょうか。
中小企業が価格転嫁するには?
ここまで中小企業を取り巻く原価高騰の背景から現状をご紹介しました。
あくまで私の見解になりますが、今後の価格転嫁への中小企業の対応は下記のようなポイントが重要と考えます。
①原価管理による定量的な説明の実施
②大手バイヤー企業とのパートナーシップ構築宣言
③新たな収入源の確保/大手依存度を下げる
原価管理による定量的な説明の実施
1つ目の価格転嫁のポイントは、原価管理によるバイヤー企業への定量的な説明になります。
バイヤー企業への定量的な説明の為の『情報』と『入手方法』は下記になります。
・原価情報のDB化(システム or Excel)で管理
・仕入先からの価格改定レターを入手
・素材価格の市況情報(銅ベースなど)をインターネットから入手
口で言う分には簡単ですが、実際に行うことは容易ではないと思います。
そもそも原価管理をしっかりとシステム管理できていないケースも多いと思います。
では、今後どのように進めていくべきなのか?今からでも遅くはありません。
これを機に仕組みを変えればよいのです。
まずは中小企業庁が出しております下記のハンドブックがオススメです。

【改訂版】中小企業・小規模事業者の価格交渉ハンドブック
中小企業庁HP:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/pamflet/kakaku_kosho_handbook.pdf
それでも不明な場合は、Setchan調達ブログまでお問い合わせください。
大手バイヤー企業とのパートナーシップ構築宣言
2つ目の価格転嫁のポイントは、大手バイヤー企業とのパートナーシップ構築宣言になります。
現実的には、大手バイヤー企業側の歩み寄りがどこまで実際に効果があるかがポイントです。
仮に正直に価格転嫁を伝えた下請企業が、価格転嫁を理由に取引停止にされていたら、皆ビビってしまい本当の事を言えないです。
そのような状況が起きない事を願いたいですね。
しかし、今後は世間での企業イメージの毀損やコンプライアンス意識の高まりから、大手バイヤー企業の対策は強化されるでしょう。
実際の現場では、コロナ以降の価格改定に対して何でもかんでも大手バイヤー企業がNGにしていた訳ではありません。
基本的には、
上記のチェックポイントによって、価格改定の承認を判断しておりました。
中には、交渉記録をエビデンスとして残す大手バイヤー企業もあります。(本当の内容かは別として)
どこまで行っても人と人が行う事なので、ミクロで見ると多少のグレーゾーンは存在するでしょう。
しかし、中小企業として自社の主張を何らかのエビデンスと共に示していくことは非常に重要です。
段階的な価格UPを行う・痛み分けの提案等、様々なアプローチを試していくしかないと思います。
新たな収入源の確保で大手依存度を下げる
3つ目の価格転嫁のポイントは、新たな収入源の確保による大手依存度の低減です。
目的としては、大手依存度を下げることで大手バイヤー企業への交渉力を上げることです。
下記の資料は中小企業(サプライヤー)側から見たバイヤー企業との販売先数と取引依存度の関係を表した資料です。
この資料を見て分かるように、販売先数を増やすことが依存度を下げるためには必須です。

引用元:(株)帝国データバンク『取引条件改善状況調査』
中小企業庁HP:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/chusho/b2_3_3.html
現在は国の支援による事業再構築補助金などの補助金施策で再起を図ることも可能です。
しかし、新事業を構築することや、新たに取引先を開拓することは容易ではありません。
つまり、多くの中小企業では『攻めの施策』は現実的ではないのです。
このような中小企業の実態を踏まえて、時代の流れだけでなく、経営者自身が自社のビジネスモデルの弱点にどれだけ素早く気付けるかが重要であると感じます。
まとめ
今回は中小企業が価格転嫁する方法についてご紹介しました。
この問題はかなり深刻だと思います。
大手バイヤー企業としても中小企業が倒産すると自分達にとっても不利益になる為、共存共栄できるような塩梅が求められるのではないでしょうか。
今回は『価格転嫁』・『大手依存』という視点からお話をしましたが、
・高齢化
・仕入先倒産
・市況変化
・環境問題
等々、徐々に中小企業にも影響を及ぼす問題が顕在化してきております。
中小企業白書などを見ると非常に細かく記載がありますので、是非見てみてください。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/index.html
今回は以上です。
引き続きSetchan調達ブログをよろしくお願いいたします!


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